インタビュー 世界へ羽ばたくエヴァディオ。そのブランドコンセプトを訊く。 インタビュアー:山本健一(サイクルジャーナリスト)


ピュアジャパニーズブランド、エヴァディオ。
オーナーの犬塚氏とその有志の力によって立ち上げたブランドだ。
設立から3年、その独創性に溢れる製品は世界をうならす力をつけている。

有志を募って「オリジナルブランドを育てていこう」
という気持ちからスタートした

3年前、エヴァディオは誕生しました。私の兄が量販店向けの自転車パーツの卸問屋をやっているんですが、ある時台湾の工場へ視察に出かけました。そこでは安いペダルやフレームなどを製作しているわけですが、同じ工場で有名ブランドのOEM生産を行っているわけです。それを見て、結局どこも同じだと思いました。それなら逆に利用して、兄の業者から上手に良い品質の物を仕入れられないか、と思いました。知り合いに声をかけて賛同するショップを募りました。それを行うにあたり、どこでもそうなんですが、大量に物を仕入れると大量に安く流れてしまうというのはよくある話なんです。それを防ぐためにブランドを作ってしまおう、育てていこうと、小売店の皆さんの力を借りて僕と一緒にやりましょう、と一念発起したのが3年前です。

他と同じ物を売っているようでは意味がない。

仕入れの段階において、人件費がかかります。あとは流通のコスト、そして在庫のリスクです。そういったものを皆さんで分担しましょう、と。営業は僕がやります。広告宣伝費は皆で分けましょう、在庫は極力しないように、仕入れる前に皆で分けるようにしよう、と、経費削減を徹底しました。
でも、他と同じ物を仕入れているようでは、まったく意味がないですよね。そこで、自分達だけの独自性があるものを販売していこうということになり、第一弾としてスタンドを作ったんですね。それが「エヴァスタンド」です。

エヴァディオの原点とも言えるエヴァスタンド

世界が認めたバイクスタンド

もともと私の店ではボントレガーやマヴィックといったホイールを中心に取り扱っていました。これらのクイックリリースはディスプレイスタンドにしっかりと載らない形状なんです。そういうものが多かったので、それらに対応するスタンドを作ろうと考えました。でもそのスタンドを作るのに1年かかりました。金型を作り、パテントを取った結果、膨大な費用がかかりました。でもそれをやりたかったんです。今ではトレックストアでも取り扱ってもらえるという人気アイテムに成長しました。

OEMパーツでも他とは違う何かを

エヴァディオのアクセサリーのほとんどは確かにOEM生産です。スタンドやフロアポンプは人気があります。例えばフロアポンプはG社で作っていますが、某社のポンプとよく似ています。ですがノズルの先はフレンチを採用しています。某社のポンプは英式ですよね。ただそれだけのことなんですけど、最初から使いやすくなっているんです。もちろん英式用のアダプターも付属します。

不便を解消するために、現状そこにあるものを少し改造すれば使いやすくなる。でもそれを作ってくれる人がいなかったんです。それをエヴァディオの商品は行っているんです。ポンプにしてもスタンドにしても、携帯用ツールだって。ラインナップを見てみると、どの製品にもどこか最低1カ所は既製品と違う点があります。もちろん使いやすいように工夫をしています。いいでしょ、なかなか。

元々は組合のグループだったエヴァディオ・ネットワーク

エヴァディオは今でこそ会社になりましたが、もともとはエヴァディオグループという小売店業者の組合のようなものからスタートしているんです。今では全国80店の小売店が加盟しています。

元々は小売り店なので、エンドユーザーからの声が一番届く位置にいる。エヴァスタンドを例として挙げますが、これはとても良い製品です。しかし採算だけ考えるとあまり効率的ではない。とにかく「良いモノを製品化したい」という気持ちでやっているんです。下世話な話ですが、価格も抑えめにして、我々なりの最低利潤が取れればいいと思って切磋琢磨しています。

オマージュではない。常にオリジナリティを

ヴィーナスは犬塚氏の人脈無しには具現化しなかった名車だ

08年モデルとして、ヴィーナスを発表しました。ダウンチューブとフォークにリブを入れた、まったく新しい構造によって高い剛性を得ており、専門誌のインプレでも高い評価をいただきました。特にフロントフォークの剛性は素晴らしく、現在は単体でも販売しています。

実は3年前に某メーカーでオリジナルフレームを製作しているのですが、諸事情により中止せざるを得ない状況になってしまいました。評価は高かったんですけどね・・・。同じ轍を踏まないように、ヴィーナスの開発は綿密に計画を立てて行いました。ヴィーナスが完成して半年後には市場に出そうと思って、台湾の工場に何度も通いました。

もともとがカーボンのゴルフクラブとかラケットを作っている工場なんですが、日本の某ブランドとまったく同じなんです。そこのカーボンチューブそのものを作っているところです。
ヴィーナスを製作したときは、僕らは金型をおこすほど力をもっていませんでした。そんなとき、3年ほど前にドイツのメーカーと台湾メーカーが共同で自転車開発を始め、共同開発でリブを用いたカーボンフレームを作っていました。フレームサイズはヨーロッパ向けで530mm以上でした。これだ! と思い、このフレームを発注するために煎餅を持って台湾に何度も通いましたね。

たまたまそこの社長が日本通で、愛知県に5年くらいいたというんです。僕は愛知出身なんですけど、それもね、凄く近くに住んでおられたらしいんです。しかも煎餅が大好きだって言うんです(笑)。さらに、僕の友人が手焼きの煎餅を作っていて、それを台湾にいつも持っていくんですけど、大好評で、いつも持ってこいって言われるんですよ。

そんなお付き合いが続き、年に4回くらい台湾に通い詰めて、やっと日本人用のサイズを作ってもえらるようになりました。08年に、それが形になりました。

些細なきっかけが大きな人脈に

元のきっかけとなったのは、兄に誘われて台湾に行ったことです。兄の会社と関係がある商社の代表が、ちょうど黎明期の台湾自転車産業と日本を繋げるパイプ役をしていた方なんです。台湾では横のつながりを重んじるので、多くのメーカーは家族のようなお付き合いをしています。で、自分が「こういうことをやりたい」と説明をしたとき、台湾の方たちが”彼の頼みであればAVEDIOを応援するよ。その代りお前もそれに応えられるように頑張れ”と言ってくれたのがきっかけなんです。

通常のシートポストをISP化する新製品。だれも思いつかないアイデアを犬塚氏がつぎつぎと提案する。
オリジナルパーツは少ないロットから製作できる。これは強みだ

08年の手応え、そして09年に繋がる

09はニューモデルのヴィーナスSLをリリースします。ジオメトリーなどは08年に発表したヴィーナスと同じですが、リアエンド部分までカーボン化し、ヴィーナスより約20gの軽量化を実現しています。正直、08年の評価は高かったんですけど、段取りがわるく、エンドユーザーの手元にまで行き渡らなかったというのが反省点です。カラーオーダーを打ち出したのですが、これが正直うまくいかなかった。コストの面でもショップが上手く絡むという面でも。ですからカラーラインナップやデカールのサンプルをつくり、イメージが湧きやすいように工夫しました。また、入門モデルでフルアルミ製のバッカスを用意しました。これはサイズが400mmから用意してあるので、女性や小柄な人にもオススメできます。これが好評で、400、440、480、520、540、570mmと6サイズで展開することにしました。

その台湾の工場は親切で、最初はペダルを20個単位で仕入れをしていたんです。これはあり得ない話で、通常の仕入れは1000個単位というレベルですよ。名前が入ったオリジナルサドルも20個単位で造ってくれたんです。これも、その人や兄の力がなくては実現できませんでした。このように台湾の業者が協力的になってくれる。すべて人脈によって助けられています。

神の祈りというブランド名。その真意は

エヴァディオはイタリア語のAVEとDIOの造語です。「神の祈り」という意味になりますが、レースにおいての勝利へのこだわり、喜び、感動を、自転車を通じて多くの方に伝えたい、という気持ちがブランド名の語源となっています。ハイクオリティー、ハイコストパフォーマンスをコンセプトに、ユーザーの皆さまから支援される商品作りを目指しています。